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帯状疱疹ワクチンに関して

  • 執筆者の写真: 志村 輝幸
    志村 輝幸
  • 5月13日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月16日



帯状疱疹ワクチンは、水痘帯状疱疹ウイルスによる帯状疱疹やその合併症を予防するためのワクチンです。帯状疱疹は、過去に水痘(水ぼうそう)にかかった時に体の中に潜伏したウイルスが再活性化することにより、神経に沿って痛みを伴う水疱が出現する病気です 。合併症の一つに皮膚の症状が治った後にも痛みが残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」があり、日常生活に支障をきたすこともあります。


帯状疱疹を発症しても、できるだけ早期の抗ウイルス薬の内服で、神経痛を残さない治療が期待できます。しかし、高齢者になるほど帯状疱疹後神経痛を発症しやすいとされ、加齢とともに発症リスクが高まります。特に60歳以上が高リスクです。50歳以上の帯状疱疹患者の約2割が帯状疱疹後神経痛に移行すると言われています。80歳以上では30%以上が発症するとされ、年齢が高まるほど発症率も上昇します。


今年2025年4月より 帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まりました。

65才以上を対象に 磐田市では公費で 1回あたり約4000円程度の補助が受けられるようになりました。帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンの2種類があります。生ワクチンは皮下に1回接種し、組換えワクチンは2か月以上の間隔をあけて2回筋肉内に接種します。生ワクチンは2016年、組換えワクチンは2020年より接種が開始されています。


どちらのワクチンが良いのか、相談されることも多くなりました。

当院では、2020年の開院以来 患者さんのコスパを考慮して 生ワクチン接種のみ推奨してきました。 

59人の生ワクチン接種と、18人の帯状疱疹治療を行っています。

これまで、ワクチン接種後の患者さんでの帯状疱疹発症を経験したことはなく、また、帯状疱疹を発症した患者さんでもワクチン接種歴のある患者さんはいませんでした。組換えワクチンは、圧倒的に価格が高いのと、副作用も多くみられるようで 添付文書上注射部位の疼痛(79.1%)、発赤(37.4%)、腫脹(24.2%)に加えて、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)(12.0%)もみられます。


ワクチンの効果をメーカーがうたう効果年数と、目指すべきである帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果で表示しています。簡単に下の表にまとめてみました



生ワクチンは費用が安いのに、効果が弱いのではというデータです。

しかし、効果に関して、生ワクチンが低くなるのは 回数が1回と半分であることもあります。これをもし 生ワクチンも5年後に追加接種として2回接種としてみると




価格は倍になりますが、それでも組み換えワクチンの1/3程度です。

そして、ワクチン接種においては 一般にブースター効果という現象があり、1回接種より複数回接種することで免疫効果が倍増します。もし2回接種した場合には1回の接種での効果5年に+5 α年で10年以上の効果が期待できるようになります。


注意が必要なのが、生ワクチン全般に言えることですが、免疫抑制状態の人では生ワクチンの効果が期待できません。免疫抑制剤を内服中もしくは免疫不全の病態の人の場合、組換えワクチンしか選択肢はなくなります。(免疫抑制剤をこれから内服する人では、その前に生ワクチンを接種することもすすめられます。)


さらには、帯状疱疹を発症した場合、早期に抗ウイルス薬内服で治療を開始することが軽症化・PHNを防ぐことにつながります。(当院でも多くの帯状疱疹治療をしてます。)

これにより、コスパを優先した治療の弱点を防げます。



 
 
 

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