よく患者さんから 健診的な胃カメラ・バリウム検査についての相談を受けます。
基本的には、胃癌検査に対しては精度や被曝などの点から胃カメラを推奨してしまいます。
胃カメラを勧めるにも、ただ、それには いろいろな前提条件があります。
端的に表現しているのが、上にあるようなリスク分類の考えです。
表を見ると、少しごちゃごちゃしていますが、幸い要点は1点です。
『ピロリ菌感染があるか、ないかです。』
胃のトラブルのかなりの元凶と言えます。
上記右図のABC法ではピロリ感染に加えて、胃炎マーカーであるペプシノゲン値を併用することで更に胃癌リスク精度を向上させています。
ピロリ菌感染に関しては、時代による感染率の違いが大きく、それは出生時の年代によって大きく違います。
左表データにある 1930年以前の出生では70%-80台の感染率が戦後1950年代で50%前後、1970年代で30%、2000年以降は10%と低下がみられます。
これは、衛生環境の改善により感染率が大きく低下しているといわれています。
左の図は、ピロリ菌の陰性者と陽性者を1-3年ごとの内視鏡検査で平均7.8年経過を追って胃癌発生率を追ったグラフです。
ピロリ陰性者からは1例も胃癌発生がみられませんでした。
(ただし ピロリ陰性者でも胃癌リスクはゼロとはいえません。)
一番怖い30-40代での若年性胃癌は、ほぼピロリ陽性者です。
現在 70歳代以上の人では、多くの人がピロリ感染しているので、全員一律 毎年胃癌健診を受けるのも必要なことかもしれません。(実際には胃炎の程度・除菌の時期などで、検査間隔を長くできると考えています)
しかし、現在30歳代より若い世代では多数が、胃癌の低リスクといえます。
多数が毎年健診が不要となります。
その間の世代はというと、自分がピロリ陽性・陰性の確認をしたうえでリスクを正しく見積もる必要が生まれます。
当院で この3年間に15例の胃癌診断をしております。
若年での胃癌に関して 20-30代での胃癌症例は4例ありましたが、すべてピロリ菌感染所見でした。40代前半で1例の胃癌症例の方は、ピロリ除菌後でした。
上記の結果を裏付けるような結果となっております。
当院では胃癌リスク低減を目指して、自費診療でのABC健診(4400円)を行っております。
(他の疾患目的で採血する場合の追加では2200円となります。)
ピロリ菌は小児期に感染するため、一度、陰性確認している人や除菌成功している人は対象になりません。
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