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​消化器疾患

*画像は全て当院症例を使用。無断転載禁止。

​逆流性食道炎

 

1.逆流性食道炎とは

 胃酸が食道に逆流することにより、食道粘膜を傷つけたり胸やけなどを引き起こす病気です。

2.症状

 胸やけや呑酸(口の中に酸っぱい液や苦い液がこみ上げる)、みぞおちの不快な感じが起きます。

3.原因

 胃酸の食道への逆流は、男性では中年以降,女性は高齢者(特に腰の曲がった人)に多くみられます。食物を大量に食べた後や、高脂肪食や甘いものを食べた後に起こりやすくなります。

 加齢や肥満による食道裂孔ヘルニアという、食道と胃のつなぎ目がゆるくなった状態も誘因になっていることもあります。

4.診断

 診断には内視鏡検査が一番適しています。食道の胃に近い部分が最も酸にさらされやすいため、下部食道 特に胃との境界に粘膜のびらん・潰瘍ができます。

5. 治療

 胃酸の分泌を抑える薬が第一選択となります。

 そのほかに、胃腸の動きを活発にする薬もあります。

 薬剤以外の生活習慣改善も大切です。食べてすぐ横になることや、肥満はお腹の圧力を上昇させ、胃から食道への逆流をおこしやすくします。また、食事の際は、食べ過ぎない・脂っこい物を過剰にとらないことを心がけましょう。

逆流性食道炎 内視鏡画像

アニサキス症

1.アニサキス症とは

アニサキスは長さ2〜3cmの細い寄生虫です。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚類に寄生します。それを人間が生食し、胃や腸壁に侵入して腹痛を起こします。

2.症状

摂取後 数時間で急激な腹痛や嘔吐を訴えます。

3.診断

病歴と腹部所見から疑った場合に、腹部エコー検査を行い、胃壁の肥厚がないか検査します。緊急で内視鏡を行って 虫体が確認できれば摘出することで治療につながります。

4.治療と予防

胃内視鏡を行って、虫体を摘出します。摘出により症状も速やかに消失します。

前夜アニサキスがいそうな魚類を生食して腹痛を起こしたら、この疾患の可能性があります。食後は、胃内視鏡でアニサキスを探し出すことが困難ですし、嘔吐すると誤嚥してしまう危険性もあります。朝食を食べずに外来を受診すると当日緊急内視鏡対応が可能にします。

胃から小腸にたどり着いたアニサキスが小腸で炎症を起こすこともあります。

アニサキスは基本的に人間の体では長時間生存できないため、自然に症状の軽減も期待できます。

摘出が最適の治療ですが、すぐに内視鏡出来ない場合、正露丸の内服が効果あるかもしれません。成分にある木クレオソートに殺虫作用があることが報告されています。

アニサキスを摘出する内視鏡画像です。

胃炎

1.慢性胃炎とは(ここは少し複雑ですので、理解しにくいかもしれません)

胃炎 本来の意味は、胃の組織の炎症を指します。

通常、組織をとらなくても内視鏡検査の観察だけで、診断できます。ただし、炎症を疑わせる赤みや粘膜のただれがあっても、それが、有意な炎症でないこともあります。そのため、経験のある内視鏡医師でないと有意でない胃炎の判断をすることもあります。

もう一つの複雑要因として、上腹部症状を訴える場合も症状から慢性胃炎と診断されます。この場合に検査して異常がないと、機能性ディスペプシアと定義するようになっています。

内視鏡で見る慢性胃炎と慢性胃炎症状は必ずしも一致しません。内視鏡で見られる慢性胃炎の多くは症状がありませんし、逆に強い胃炎症状を訴える例でも内視鏡で胃がきれいなことが多くあります。ここも複雑にさせる要因となります。

内視鏡で見られる慢性胃炎は、ほとんどの慢性胃炎はヘリコバクターピロリ菌の感染が原因です。稀ではありますが、自己免疫性胃炎が原因のこともあります。

2.診断

一度は、胃内視鏡検査が必要です。

症状から診断される慢性胃炎とは、癌や潰瘍・炎症などが無いのに症状があるので 胃の機能の障害 機能性ディペプシアと区別されます。

3.治療

まず、ピロリ感染がある場合には除菌治療を行います。それ以外の胃炎症状により、生活の質が低下している場合、症状の改善を目指します。

機能性ディスペプシア例ではそれに対する治療を行います。

萎縮性胃炎の内視鏡画像です。ピロリ菌の現感染。
萎縮性胃炎の内視鏡画像です。

機能性ディスペプシア

1.機能性ディスペプシアとは

みぞおちの痛み、食後の膨満感などの上腹部症状を訴え、内視鏡検査などで症状を説明しうる逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍などの異常が無い例を機能性ディスペプシアと呼びます。

これらの症状を訴える人が極めて多いこと、生活の質が著しく低下していることが明らかとなり、治療する意義は大きいといえます。

2.原因

発症には、胃運動機能異常、粘膜の炎症、胃酸、内臓の知覚過敏(胃のみならず脳の知覚過敏)、精神神経因子などか様々に関与していると議論され、発症機序の解明が懸命に進められています。

3.診断

辛いと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感のうち一つ以上あり、症状の原因となりそうな器質的疾患(胃内視鏡検査を含む)がないこと。6ヶ月以上前から症状があり、3ヶ月間はこの診断基準を満たす。と定義されています。

日常臨床ではこのような厳密な診断基準に満たなくても上腹部症状を訴える例は機能性ディスペプシアに準じて、症状を軽快・消失させる治療を行います。

 

4.治療

症状から定義されている疾患ですので、症状を改善させることが治療目標です。様々の原因が複雑に関与して症状を起こしていると考えられていることら、治療は様々な薬剤の処方が試みられています。

・消化管運動調節薬  ・酸分泌抑制薬
・鎮痙薬       ・漢方製剤
・抗不安薬            ・抗うつ薬         

*精神的な症状を強く合併している場合、心療内科への受診が適当な場合もあります。

こうした薬剤が時には組み合わせて処方されています。

機能性ディスペプシア_edited.jpg

胃潰瘍

1.胃潰瘍とは

胃酸の影響を受けて胃の粘膜に潰瘍を形成するものを指します。

ピロリ菌の感染と解熱鎮痛剤が2大病因であるといわれています。また、ストレスも肉体的、精神的と理由を問わず潰瘍の原因となります。

 

​​2.  症状

最も多い症状はみぞおちの痛みです。これは食前、食後どちらでも生じることがあります。そのほか腹部膨満感、悪心、嘔吐、食欲不振、胸やけなどを訴えます。潰瘍からの出血では、吐血・下血(タール状の便)することもあります。

 

3. 診断

診断は胃内視鏡検査で行います。

4.治療

制酸剤の服用で良好な治療効果が得られます。胃潰瘍の多くはピロリ菌陽性ですが、陽性例では除菌治療により再発率は著しく低下します。

出血例には緊急な対応が必要で、止血処置・入院治療可能な病院へ緊急紹介させてもらっています。

当院での胃潰瘍 胃カメラ内視鏡画像です。

十二指腸潰瘍

  1. 十二指腸潰瘍とは

主に十二指腸の入り口である球部に潰瘍ができます。比較的若い方に多くみられます。

 

2.症状

典型的には、みぞおちの痛み、重苦しさなどが、夜間・早朝などの空腹時に起こります。

また、潰瘍が治る過程で強い変形が起こり、狭窄を起こすと食物の排出が障害されることもあります。十二指腸潰瘍部から出血で、吐血・下血(タール状の便)することがあります。潰瘍が深くなり、十二指腸壁に穴があくと、強い腹痛が出現します。

3.診断

胃内視鏡検査で行います。

 

4.治療

制酸剤の服用で良好な治療効果が得られます。

十二指腸潰瘍の多くはピロリ菌陽性ですが、陽性例では除菌治療により再発率は著しく低下します。

出血や穴があいた場合には緊急で病院での対応が必要になります。

十二指腸潰瘍の胃カメラ内視鏡画像です。

1.ピロリ菌

胃の中にいる細菌で、胃潰瘍の約70-80%、十二指腸潰瘍の約90%に関わっていると考えられています。

胃癌に関して、日本人を対象にピロリ菌感染の有無で長期間経過を見た報告では、感染者だけに発癌が確認されました。(稀ですがピロリ菌感染がなくても胃癌を発症することもあります。)

ピロリ菌 感染者全員が胃癌になるわけではないことから、食塩、体質など様々の因子が発癌に関わり、ピロリ菌が直接胃癌を起こすのではなく、胃癌のできやすくなると考えられています。

2.感染状況

ピロリ菌は幼少期に感染します。成人ではほとんど感染しません。

日本では若年者では感染率が低率ですが、高齢者では高率に感染しています。

図にあるように1940年代生まれでは8割感染していたのが、1980年以降では2割程度の感染率になっています。

一度、陰性が正確に確認されていれば、再度 検査する必要はありません。

陰性の場合でも、意図した治療をしなくても 除菌されている場合もあります。

3.診断

ピロリ菌検査をするのに以下の疾患が保険適応となります。

●   ピロリ感染胃炎
2013年に保険適用となり 最大の疾患となっています。

●   胃潰瘍、十二指腸潰瘍

●   胃MALT リンパ腫 ●   早期胃癌に対する内視鏡治療後
●  特発性血小板減少性紫斑病(ITP)など

診断方法に関しては下記の方法があります。

・血液・尿で測定する抗体測定法
・尿素を内服してその前後で吐いた息を採取して調べる呼気試験法
・便中のピロリ抗原測定法
・内視鏡で採取した組織を用いるもの
  *当院では組織検査は患者さんの費用が高額になるため、行っていません。

胃癌発生率 加工.png
ヘリコバクターピロリ

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)

食道癌

1.食道癌とは

 60~70代以降の比較的高齢者に多く、男性が女性の5倍くらい多く発生します。飲酒・喫煙が発生リスクを上昇させます。

2.症状

早期には症状が出にくいです。

進行癌では、食物がつかえる症状で見つかることが多いです。

 

3.診断

早期に発見するため、特に喫煙・多量飲酒の人では、毎年1回の内視鏡検査をおすすめします。強調画像で観察することで、通常では見えない小さながんでも発見できることがあります。

4.治療

 癌の進み具合により、種々の治療法があります。

粘膜内にとどまる早期癌には、内視鏡治療が行われます。この段階でみつけるのは定期的に検査していても​ 必ずみつけれるとは限りません。

早期癌以外は、外科的手術・放射線療法・抗がん剤治療などが行われます。  

当院での食道癌の 胃カメラ内視鏡画像です。

胃癌

1.胃癌とは

胃の表面の粘膜から発生する癌です。主な原因は、ピロリ菌の感染による炎症です。

2.症状

胃癌の症状は、早期の段階ではほとんど症状がなく、進行に伴い 痛み・不快感・膨満感に加え、胸やけ・吐き気・食欲不振・貧血・体重減少などが認められますが、症状だけからは他の病気と区別が出来ません。

3.診断

胃癌の診断は内視鏡検査が適しています。直接胃内を観察し、さらに色調強調機能により詳細な観察ができます。また、病変が疑われる場合、組織をつかみ取り顕微鏡診断により確定診断ができます。

リンパ節や遠い臓器への転移を検査するのにエコー、CT検査などが行われます。

4.治療

1)  早期胃癌の治療

転移の可能性の低い早期胃がんに対しては、内視鏡的切除術、縮小手術などが、それぞれの進行度に応じて選択されます。 

2)  進行胃癌の治療

進行癌に対しては、進行度に応じて、外科治療単独だけでなく、外科治療と化学療法の併用療法も一般的となっています。

早期胃癌 胃カメラ内視鏡画像です。
早期胃癌 胃カメラ内視鏡画像です。

​当院でみつかった早期胃癌 2例

胃癌 胃カメラ内視鏡画像です。

​進行胃癌例

胃粘膜下腫瘍

1.胃粘膜下腫瘍とは

胃の粘膜層よりも深い胃壁内に発生した病変を指します。病変が大きくなるにつれ、胃の内腔に突出し隆起を形成し、表面にくぼみや潰瘍を形成することもあります。

胃粘膜下腫瘍の多くは腫瘍性ですが、非腫瘍性の疾患も含まれています。また、病変は良悪性、いずれの場合もあります。

 

2.種類

胃粘膜下腫瘍にはGIST、リンパ腫、平滑筋細胞由来の腫瘍、神経系腫瘍、脂肪細胞由来の腫瘍、血管内皮細胞由来の腫瘍、基底細胞由来のカルチノイドなどに加え、迷入膵、顆粒細胞腫などがあります。GISTの一部、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カルチノイドの一部では転移をきたすこともあり、悪性度の高いものもあります。

 

3.症状

腫瘍が小さい場合は無症状で、胃の健診などで偶然発見されることもあります。時に腹痛や不快感を伴う場合がありますが、病変が原因とは限りません。しかし、悪性で腫瘍が大きくなってくると、腫瘍が崩れて出血し、吐血や下血を生じることがあります。さらに、転移をきたせば胃がん同様、様々な症状が認められ、全身衰弱にもなります。

 

4.診断

内視鏡検査が精密検査に適しています。病変の表面に潰瘍などを形成して病変が露出している場合には、病変の一部を採取して、病理組織診断が可能ですが、病変が正常粘膜に覆われている場合が多いために胃癌のように容易に診断することが困難です。大きさが大きいものでは、診断をつけることが必要なため、精密検査可能な総合病院へ紹介させてもらうこともあります。

粘膜表面を切開し、露出してきた粘膜下組織を採取したり、超音波内視鏡検査で病変の性状を調べたり、生検を行うこともあります。

 

5.治療

一般に、大きさが2cm以下の場合には年1回程度の内視鏡検査、超音波内視鏡検査などで定期的な観察を行い、2〜5cmの腫瘍には腹腔鏡補助下(腹部に小さな穴をあけて行う)に局所切除を行い、診断治療を行うことが推奨されています。

さらに、大きさが5cm以上の腫瘍では悪性腫瘍である可能性が多いために手術を行うことが原則です。このような症例では、開腹して切除することが勧められています。小さい腫瘍でも経過観察中に大きさや形態に変化が認められた場合には手術の適応となります。

胃SMT 胃カメラ内視鏡画像です。

便潜血

1.便潜血検査とは

消化管のどこかで出血すると、便の中に血液が混入します。出血が少量の場合には肉眼的な変化に乏しく、便の潜血反応を行うことで消化管出血の有無を診断します。

主に 大腸がん検診の一次検査として用いられています。

 

2.検査の方法

検査キットの説明に従って採取します。

1度の検査では、十分な感度が得られないため、2日間続けて採取する「2日法」が主流です。

3.検査が陽性の場合

大腸に何らかの病気がある可能性がありますので、すみやかに精密検査が望ましいです。もう一度便潜血検査を行うのは意味がありません。もっとも正確な精密検査は大腸内視鏡検査です。1-2年以内に検査を施行している場合は、前回検査した医師に相談してもいいかもしれません。

便潜血検査が陽性となるためには出血している病変が原因ですが、ポリープやがんの場合はある程度大きくないと陽性になりません。そのほか炎症性の腸疾患や痔核や裂肛などの肛門の病気でも陽性となります。陽性の場合でも、約半数の人には大腸に病気がありませんし、精密検査の結果、大腸がんと診断される人は0.1〜3%であり、そのうち約半数が早期がんです。自覚症状がなくて検診で発見された大腸がんは治る率が高いので、便潜血検査が陽性にでたからといって不安に思うことなく、精密検査をぜひ受けてください。

血便_edited_edited.jpg

大腸癌

1.大腸癌とは

大腸癌は、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど高くなります。大腸癌の死亡率は男女とも1970年代から急増しており、脂肪摂取量の増加と関連があると考えられています。癌による死亡の原因として、大腸癌は男性で第4位、女性で第1位となっています。

直系の親族に同じ病気の人がいると大腸癌にかかりやすいと考えられています。生活習慣では、喫煙・肥満で結腸癌リスクが高くなることが確実とされています。また、飲酒や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)は、おそらく確実な大腸癌リスクとされています。

定期的に適度な運動をすることには結腸がんの予防効果があるとされています。また、果物摂取は大腸がん予防の可能性があるとされています。

 

2.症状

早期癌では基本的に症状がありません。大きなポリープ状の早期癌で、血便や腹痛の原因になっていることもあります。

大腸癌に特徴的な症状はなく、良性疾患でも癌と類似した症状がおきます。血便、便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が多く、これらはS状結腸や直腸に発生した癌におきやすい症状です。中でも血便の頻度が高く、これは癌の中心が潰瘍となり出血がおきるためです。

癌による血便では暗赤色の血液が便に混じったり、ときに黒い血塊が出るなどの特徴があります。肛門から離れた盲腸癌や上行結腸癌では血便を自覚することは少なく、貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。 

腸の内腔が狭くなりおこる腹痛、腹部膨満感や痛みを伴うしこりが初発症状のこともあります。
ときには、嘔吐などのがんによる腸閉塞症状で発見されたり、肺や肝臓の腫瘤として大腸癌の転移が先に発見されることもあります。

3.診断

早期癌は大腸内視鏡でないと診断ができません。

進行した大腸癌は、エコー・CTでも診断可能です。リンパ節・肝・肺などの遠隔転移の有無も評価できます。採血でも、ある程度 大腸癌を疑うことができます。

進行した大腸癌では診断確定のため 組織をとることが必要になります。

最近は、CTコロノグラフィーという大腸内を検査する方法も行われています。その場合でも、大腸癌を疑った場合には大腸内視鏡での精査が必要となります。

4.治療

粘膜内もしくは粘膜層1mm以内の早期大腸癌であれば、大腸内視鏡で切除することで完治可能です。大腸内視鏡の大きなメリットとしては、この内視鏡検査と治療を一連の処置で行えることにあります。

進行した大腸癌では病期に応じて 手術治療と化学療法が行われるため、総合病院外科での治療が必要になります。

早期大腸癌 大腸カメラ内視鏡画像です。内視鏡切除により治癒してます。

​茎のある形の早期大腸癌で

​内視鏡切除により完治

感染性腸炎

1.感染性腸炎とは

感染性腸炎の原因となる病原微生物は、細菌・ウイルスなどさまざまなものがあります。

大きく分けて、細菌やウイルスが腸管の粘膜に感染することで発症するものと、細菌がつくり出す毒素によって発症するものがあります。

原因と考えられる食物を口にしてから発症するまでの潜伏期間や症状、経過は原因となる病原体によって異なります。こうした情報から原因となった病原体をある程度推測することもできます。日常的によく遭遇するものはウイルス性腸炎です。

 

2.症状

1)細菌性腸炎

食品による急性腸炎の集団発生はサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌などが原因となります。頻度が高いのは、鶏卵や食肉につくサルモネラ菌による腸炎で、8〜48時間の潜伏期のあと、悪心、腹痛、下痢が出現します。カンピロバクター腸炎もよくみられ、おもに鶏肉が感染源で、かぜのような症状が先行します。腸炎ビブリオは魚介類が原因となることが多く、10〜18時間の潜伏期のあと、発症します。

細菌がつくり出す毒素によって発症するもの代表がブドウ球菌で、感染経路となる食物はさまざまで、潜伏期間は短時間(1〜5時間)です。

O-157はベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌の一種で、汚染された食品や水による経口感染、人から人への感染によります。下痢だけでなく血便もみられるのが特徴で、ベロ毒素により急性腎障害、溶血性貧血をおもな症状とする溶血性尿毒症症候群をおこすこともあります。

2)ウイルス性腸炎

乾燥した冬におこることが多く、「おなかのかぜ」などと呼ばれます。上気道炎症状や上部消化管症状をともなうこともあり、原因はエンテロウイルス、腸管アデノウイルス、ノロウイルスなどです。ロタウイルスは乳幼児の重症化する下痢の原因ウイルスです。

 症状と経過だけから原因を特定するのは必ずしも簡単ではなく、細菌性のものは便の細菌培養によって診断される場合もありますが、ウイルス性の場合には原因を特定することは困難で、症状や流行の情報から総合的に判断します。

 

3.治療

どのような原因であっても、下痢による脱水の影響を防ぐことが最も重要で、水分補給が中心となります。また、腸管安静のため、絶食も重要です。軽症ならばスポーツ飲料などを飲むだけでよいのですが、重症ならば点滴が必要となります。下痢止めは、体内の毒素や病原体の排出を遅らせる可能性があるため、使用は最小限にとどめられます。

 

細菌性の食中毒は自然に治ることも多く、必ずしも抗生物質を服用しなければならないわけではありません。

 予防として食品の管理に気をつけ手洗いを励行しましょう。食中毒が発生しやすい季節には生ものはなるべく控え、調理用具を清潔に保ちましょう。また、家族や身近に下痢をして感染性腸炎が疑われる患者がいる場合には吐物や排泄物の処理に慎重を期します。

感染性腸炎について

虚血性腸炎

1.虚血性腸炎とは

大腸の血流障害により大腸粘膜に炎症や潰瘍が発症し、突然の腹痛と下痢・血便を来たす疾患です。好発部位は、図のように主に左側の大腸で下行結腸、S状結腸に好発します。慢性便秘や浣腸などによる腸管内圧の上昇が誘因となることが多く、 若い方でも発症します。

 

2.症状

突然の腹痛と下痢,血便で発症します。

3.診断

当院では、診察時の腹部エコーで診断することが多いですが、軽症で発症から日時が経っていると所見が軽く画像所見では診断できないこともあります。

 

発症急性期は、大腸内視鏡検査に特徴的所見がみられるため診断は比較的容易です。しかし、急性期は炎症により腹痛がある中での検査となります。苦痛が大きいため、当院では ほとんど行っていません。(大腸癌などの器質的疾患の除外のために1-2ヶ月後に大腸内視鏡検査をしています。)

重症度から一過性型と狭窄型、そして壊死型の3型に分類されます。壊死型は重症であり、緊急手術の適応となりますが極めて稀です。

 

4.治療

絶食による腸管安静にて、数日で自然軽快することがほとんどです。絶食しても、水分補給は適切に補う必要はあります。

虚血性腸炎について

大腸憩室症

1.大腸憩室とは

憩室とは腸管の内壁の一部が外側に向かって袋状にとびだしたものです。憩室の数はさまざまで、頻度は年齢とともに増加します。

欧米人に多く、日本人にはあまりみられませんでしたが、最近は増加しています。日本人では盲腸や上行結腸など、大腸の右側に多くでき、欧米人では大腸の左側に多いという傾向があります。しかし、食事の欧米化や高齢化に伴い、日本でも大腸左側の憩室が増えています。

 

2.原因

腸管の内圧の上昇に伴い大腸壁の筋肉層の弱い部分(血管などが腸壁を貫いて筋層が弱くなっている部分)から粘膜が脱出して憩室が生じると考えられています。

3.症状

ふつうは無症状ですが、憩室に炎症をおこして憩室炎になると腹痛の原因となったり、出血することがあります。盲腸など右側の大腸の憩室炎は急性虫垂炎と症状が似ていて、鑑別が困難なこともあります。

4.診断

多くの場合は検査で偶然発見されます。CTや大腸内視鏡検査を受けたときに偶然発見されることもよくあります。 

憩室炎をおこしているときは、CT・エコー検査で憩室の存在や憩室炎を診断できることもあります。大腸内視鏡検査を行って他の疾患を除外して診断を確定することもあります。

 

5.治療

大腸憩室症は悪い病気ではありません。たとえ憩室がたくさんできていても、症状がなければ治療は必要ありません。憩室炎や憩室の周りまで炎症が広がる憩室周囲炎は、放っておいて重症化すると腹膜炎に進展することもあり、抗生物質による治療が必要です。大腸憩室からの出血は多くは間欠的な出血で7〜8割が自然に止血しますが、出血の程度が重度の場合やくり返す場合には大腸内視鏡による止血処置を行うこともあります。また、穿孔といって憩室に孔があくことがあり、こうなると腹膜炎をおこして緊急に手術しなければなりません。

盲腸の多発憩室 大腸カメラ内視鏡検査画像です。

​盲腸に多発した憩室

潰瘍性大腸炎

1.潰瘍性大腸炎とは

 潰瘍性大腸炎は大腸に慢性の炎症がおきて 粘膜にただれができる病気です。下痢・血便・腹痛などの症状がみられます。ひどくなると一日に10回以上も粘血便や血便がでるようになります。これらの症状は、良くなったり、悪くなったりを繰り返します。

炎症のある大腸は肛門に近い直腸から連続性に、奥に広がっていく性質があり、直腸だけに炎症がある方から、大腸全体に炎症が広がる方までさまざまです。

基本的には良性の病気で、ほとんどの方は適切な内科的治療により普通の生活が送れるようになります。日本では、生活の欧米化の影響なのか、患者数は徐々に増加しています。

2.原因

この病気がなぜ発症するかは、正確にはまだわかっていません。

(1)遺伝的な要因、(2)食べ物や腸内細菌、化学薬品などの環境因子、(3)免疫の異常の3つが重なり合って発症すると考えられています。食生活の欧米化もこの病気が増加している要因のひとつと考えられています。

 

3.診断

この病気のほとんどの患者さんは血便や、血性下痢をおこして受診されます。

炎症反応を知るための血液検査などが行われ、さらに大腸のより詳しい状態を知るために大腸内視鏡検査などの検査が行われ、これらの検査結果から総合的に診断されます。

4.治療

『いい状態にする』ための治療と『いい状態を維持する』治療に分けられます。

中等症までは5-ASAと呼ばれる薬剤を用いて、炎症を治めます。重症例では、最初からステロイドを使用することもあります。また、いい状態を維持するためにも5-ASAを継続することが行われます。これらの治療法で効果がない場合、バイオ製剤とも呼ばれる新しい治療方法を選択する場合もあります。重症の場合、手術が必要なこともあります。

潰瘍性大腸炎(UC) 大腸カメラ内視鏡検査 画像です。

​びまん性に発赤を伴ったびらんのある大腸

腸閉塞(イレウス)

1.腸閉塞とは

いろいろな原因によって、小腸や大腸の内容物の通過が悪くなったり、完全に閉塞されることによって、腸管内容物が肛門方向に運ばれなくなる病気です。

 

2.原因

・お腹の手術の影響で、腸管の一部に狭い部位が生じている

・腸管内の腫瘍(癌・巨大ポリープなど)や異物など。

・腸どうしが重なり合うか捻じれ合う。

 

3.症状

腹部膨満(おなかが張る)、吐き気・嘔吐、腹痛などの症状が出ます。

 

4.診断

腹部レントゲン、エコー、CTで診断します。

造影CTにより 閉塞部位や血流障害等の詳細な検査も必要です。

 

5.治療

通常、入院しての治療が必要となります。

血流障害を伴っている場合、早期に 腸のねじれ・索状物による腸圧迫、・腸内異物や腫瘍を手術で治療する必要があります。

血流障害を伴わずに癒着等で通過が悪くなっている場合は、鼻からチューブを通して小腸に詰まった内容を一旦 取り除き閉塞を解除します。通常の蠕動通過が確認されれば、手術せずに治癒が期待できます。

イレウス レントゲン画像

​レントゲンで腸内容物が停滞しているため、液面がみえる。

虫垂炎

1.虫垂炎とは

虫垂は盲腸から垂れ下がっている管です。虫垂の形や長さ、位置などは個人差がありますが、一般的に長さは6〜8cm前後で径は6mm前後です。その虫垂が感染して化膿性炎症が起こった場合に虫垂炎といいます。

2.症状

腹痛が突然起こります。初め、痛みはみぞおち付近にみられ、同時に嘔気・嘔吐やおなかが張った感じを伴うことが多く、胃の病気と勘違いされる人もいます。上腹部の痛みは次第に、右下腹部に移動し、ここで痛みが持続します。この痛みは歩いたり咳をしたときなどに強くなり、37〜38度の発熱もみられます。高齢者では症状があまりはっきりしないことがあります。

3.診断

今までに述べた臨床症状に加え、右下腹部の触診で圧痛(おさえると痛みがある)や腹筋の緊張が認められることが診断の参考になります。血液検査で炎症反応が認められ、腹部の画像検査で腫大した虫垂が確認出来たら診断は確実になります。

当院では、診察時のエコー検査にて診断しています。

4.治療

軽症の場合には抗生物質の投与により炎症をおさえることが期待できます。しかし腹膜炎の疑いがある場合には早めに手術となります。そのため、当院では診断後、手術対応可能な総合病院外科へ紹介させていただいております。

虫垂炎 エコー画像

​腫大した虫垂

便秘症

1.便秘症とは

本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態〗と定義されています。排便習慣は個人差が大きく、毎日排便があっても硬便や排便困難を感じる場合もあり、排便が2〜3日に1回で、便が硬くても軟らかくても何の苦痛感を感じない場合もあります。問題となるのは排便困難や腹部膨満感など症状を伴う便通異常です。

食物は胃で消化され、その栄養分は小腸で消化吸収されます。その残骸が大腸に送られますが、その時点では水分を多く含んだ泥状態です。これが大腸を移動する間、徐々に水分が吸収されて便塊となります。もし便塊が何日も大腸内にあると、水分吸収はさらにすすみ便塊は硬く小さくなります。

2.原因と症状

便秘症は、その原因により以下のように分けられます。

1)器質性便秘

消化管(小腸・大腸)の器質的障害が原因でおこる便秘です。

消化管内腫瘤、炎症性・瘢痕性狭窄、腸重積、癒着、消化管外腫瘤による圧排など。

2)機能性便秘

・症候性便秘

糖尿病、パーキンソン病、橋本病など他の疾患に伴って生じている便秘です。

・習慣性便秘

a) 弛緩性便秘

大腸の蠕動や緊張が低下することで糞便の通過時間が延長し、大腸で水分が高度に吸収されて便が硬くなります。習慣性便秘で最も頻度が高く、日本人の便秘の中で最も多くみられます。高齢者ややせ型の女性、長期臥床者(寝たきり)などに多く、食生活・排便習慣・食物繊維の不足・腹筋力の低下が原因といわれています。

b) 痙攣性便秘

左側大腸の緊張が持続的に強いために大腸内容の推進がブロックされるために起こります。排便に際し腹痛を伴い、最初に硬い便(兎糞状)が出て、後半は軟便ないし泥状のことが多いです。また排便後もすっきりせず、残便感や少量の軟便ないし泥状便が続くことも少なくありません。過敏性腸症候群の症状としてみられることが多いようです。

c) 直腸型便秘

直腸内に入ってきた便をうまく排出できない状態。正常では便が直腸に下りてくると

直腸壁の伸展刺激により排便反射が起こりますが、この反射が起こらなくなった状態であり、便意を我慢する習慣を続けた結果なることが多いといわれています。

3.診断

腹部レントゲンで便の貯留具合を検査します。

ただの便秘かと思ったら、病気が隠れていることもあり、特に検査をしたことがない人では、病気を除外のための検査も必要です。エコーや大腸内視鏡検査で検査できます。

急に便秘傾向となった場合は特に重要となります。

4.治療

習慣性便秘では、規則正しい排便習慣の確立、食物繊維を十分に含んだ食事など日常生活改善に加え、必要に応じて塩類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤、腸刺激性下剤などを適宜使用します。

残便がある大腸
きれいな大腸

過敏性腸症候群

1.過敏性腸症候群とは

腹痛や腹部不快感などの下腹部を中心とした腹部症状、また便秘あるいは下痢などの便通異常を症状とします。検査ではその症状の原因となる異常を認めない腸管の機能性疾患です。

生活の質を低下させることも少なくなく、20〜40歳代に多いことから学業や就業に支障をきたすため近年重要視されています。

 

2.原因

大腸を中心とした消化管運動の異常、消化管知覚閾値の低下、ストレスなどの心理的要因、ライフスタイルの歪みなどが要因と考えられています。単一要因であることは少なく、むしろいくつかの要因が複合的に関与していることが多いようです。

3.症状

便通状態から「便秘型」と「下痢型」、そしてその両方を交互に繰り返す「交替型」に分類されます。便通異常を伴わない腹痛のみのこともあります。

「便秘型」はコロコロとした便で出にくく、排便後も残便があります。「下痢型」は軟便や水様便、粘液便が頻繁に出ます。また、どの型にも起こり得る症状として、排便により軽快する傾向のある下腹部の痛みや不快感、おなら、腹鳴、膨満感、吐き気などがあります。さらに、めまい・頭痛・動悸・肩凝りなどの自律神経失調症状や不安感・落ち込み・イライラ・不眠などの精神症状がみられることもあります。

4.診断

大腸癌、クローン病や潰瘍性大腸炎など、感染性腸炎、虚血性腸炎、大腸憩室症などの腸疾患や婦人科疾患を除外することにより診断されます。

5.治療

生活習慣の改善と食事療法、消化管運動機能調節薬を中心とした薬物療法が中心となります。

特定の食物で症状が起きやすい人は、それを避けることで改善が期待できます。また、線維質の多い食品や乳酸菌食品を意識して摂取することで症状が軽快することもあります。

薬物療法は便性状に合わせた腸管運動および内容物を調整する薬剤を用います。また内臓感覚や脳の過敏性を調整するため、あるいは自律神経失調症状や精神症状がみられる場合は、抑うつ感や不安を抑える薬を使うこともあります。

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脂肪肝

1.脂肪肝とは

肝臓は吸収された栄養分の一部を細胞内に蓄えています。内臓脂肪として、肝臓全体に過度に脂肪がたまりフォアグラのようになった状態を脂肪肝といいます。

 

2.原因・症状

脂肪肝の原因は、肥満、アルコールの摂りすぎ、糖尿病がほとんどを占めています。また、他の内分泌疾患や代謝性疾患、ある種の薬剤摂取などが原因になることもあり、稀ですが、過度の栄養低下を原因とする場合もあります。

症状はほとんどありません。

 

3.診断

健診や偶然の機会の血液検査などで肝障害を指摘され、診断されることの多い疾患です。AST、ALTが高値を示します。

 

肝障害が認められると、エコー検査が行われます。脂肪肝は正常な肝臓に比べて白っぽく描出されます。通常、肝臓は右の腎臓と接しており、脂肪肝では、白黒のコントラストができます。更に、肝臓内部の血管の見え方なども合わせて脂肪肝と診断します。

4.治療

治療は、食べ過ぎ、アルコールの摂りすぎを止め、食事療法、運動療法が基本となります。脂質代謝の改善を目的としての薬物やビタミンEが使われることもありますが、あくまでも補助的な治療となります。

アルコールによるものは、脂肪肝から肝線維症、肝硬変へと進展し、肝癌の発生がありうることが以前より知られていました。

アルコールを飲まない方の脂肪肝からも、肝硬変、肝癌へと進展する病態が存在することが明らかとなり、非アルコール性脂肪性肝炎と呼ばれています。一部の脂肪肝のみがNASHに進展しますが、その詳しい仕組みはまだわかっていません。ただし、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などのいわゆるメタボリック症候群を構成する要素を合わせ持った方は、特に注意が必要です。

エコー 脂肪肝 画像です。

胆石症

1. 胆石症とは

胆石が、胆道内(胆汁の流れ道)で閉塞を来たし 腹痛や発熱などの症状をおこします。

高齢化と食生活の欧米化とともに、胆石を持つ人の割合は増加しており、成人の胆石保有率は10%前後と考えられます。

2.症状

みぞおちから右側の上腹部に激しい腹痛発作が起きることが有るが、胆石をもっている人の約3分の2は無症状であると考えられます。

胆石の症状は、結石がはまり込む場所によって異なります。胆のうにつまる場合には胆石発作となり、みぞおちから右上腹部に鋭く差し込むような痛みがでます。特に食事をとったあとに現れやすいです。閉塞が持続して、細菌感染を伴うと胆のう炎となり発熱を伴うこともあります。総胆管につまると、黄疸の症状が現れます。総胆管の結石はさらには膵液の流れを妨げて、急性膵炎を引き起こすこともあります。

 

3.   診断

胆石・総胆管結石を疑ったときには、血液検査やエコー・CT検査を行います。

4.治療

胆嚢結石には腹腔鏡下胆のう摘出術、総胆管結石には内視鏡的切石術などがあります。

また、細菌感染の併発の有無によって、緊急の対応が異なります。

胆石

肝硬変

1. 肝硬変とは

長年の慢性肝炎により肝臓が硬くなった状態です。

日本ではC型慢性肝炎によるものが約65%で最も多く、その他にB型慢性肝炎、アルコール性肝障害、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎などによるものがあります。

肝炎ウイルス診断治療が進歩しており、今後、脂肪肝による肝硬変の割合の増加が予想されています。

2. 症状

肝機能がある程度保たれているうちは症状は見られません。

肝機能が次第に低下してになると 黄疸、腹水、脳症、食道静脈瘤、出血傾向、浮腫が出現します。肝癌のリスクも上昇していきます。

3.治療

肝硬変は基本的に治らない病態です。

 

無症状の段階で、慢性肝炎がコントロールできれば、その状態を維持できます。そのため、慢性肝炎の原因となる疾患の治療が基本となります。

 

症状が出た場合は、症状に対する対症療法になります。肝不全対策、消化管出血の予防・治療、腹水軽減、腹膜炎治療などを行います。また、肝癌が発生すればその治療を行います。末期肝硬変の唯一の根本的治療法が肝移植です。

肝硬変

原発性胆汁性胆管炎

1.原発性胆汁性胆管炎とは

以前は肝硬変で見つかることが多く『原発性胆汁性肝硬変』と呼ばれていましたが、現在は、肝硬変にならずに診断・治療されることが多くなっており、『原発性胆汁性胆管炎』と呼ばれています。原因不明の慢性に進行する肝疾患です。

 

2.症状

健診の肝機能障害など、無症状のうちに 早期に診断される症例が多くなっています。

 

進行すると、慢性の肝内胆汁うっ滞の結果として、皮膚のかゆみ、黄疸が現れます。

長期の胆汁うっ滞が続くと、最終的には胆汁性肝硬変となります。また、脂溶性ビタミンの吸収障害がみられることもあります。

 

3.診断

この病態の本態である慢性の肝内胆汁うっ滞に伴い、血液検査でのALP、γ-GTPなどのいわゆる胆道系酵素の上昇が特徴的です。その他、高コレステロール血症、血清銅値の上昇がみられます。そして、最も特徴的な検査所見は、抗ミトコンドリア抗体陽性です。確定診断は、エコー下で肝生検を行って、この病気に特徴的な慢性非化膿性破壊性胆管炎の病理組織学的所見を確認することです。

4.治療

ウルソ内服で肝機能障害のコントロールを目指します。その他、高脂血症を伴っていればベザフィブラートを処方することもあります。

肝臓

胆嚢腺筋腫症

1.胆嚢腺筋腫症とは

胆嚢壁の全体あるいは一部の肥厚を特徴とする病変です。胆嚢を摘出した症例の約10%に認められています。

胆嚢腺筋腫症は病変の部位や広がりから、図のような3つの型に分類されています。

 

2.症状

一般に無症状で経過して特有の症状はないことが多く、エコー検査などで偶然発見されます。

 

3.診断

主に画像検査で行われ、特に腹部エコー検査が最も簡便で有効な検査法です。肥厚した胆嚢壁内に小さな袋状の無エコー領域として描出されますが、壁内に結石を伴ったり、コメット様エコーと呼ばれる高エコー像として描出されたりすることもあります。

胆嚢壁が肥厚するため、胆嚢癌との鑑別診断が必要になり、超音波内視鏡・CT、MRI検査などを行う場合があります。

4.治療

胆嚢腺筋腫症の診断がなされても無症状の場合には積極的な治療は必要ありませんが、胆嚢結石や胆嚢炎を伴い、腹痛などの症状を認める場合には胆嚢摘出術の適応となります。また、胆嚢癌との鑑別診断が困難な場合にも手術を行うことがあります。

手術方法には通常の開腹手術による胆嚢摘出術と腹腔鏡を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。

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